選句と選評

百年笑顔の一句

第4回

受付日(回収): 2026年9月10日 選句日: 2026年9月15日 投句者数: 8名 総句数: 55句 別掲随想: 4篇

選者について

選は、地域に根ざした複数の選者が持ち回りで担当します。本事業は技巧の巧拙を競うのではなく、暮らしの手触りを大切にする趣旨のため、選者の氏名は公表せず、選の言葉のみをお届けします。

Saiyusyu

最優秀賞

おはようと あたま下げてた 黄金色も ★最優秀

あざみ

実りを迎えた稲穂が頭を垂れる――その姿を「あたま下げてた」と捉え、朝の挨拶に重ねた。黄金色の稲田に「おはよう」と声をかければ、稲もまた深々と頭を下げて応えている。擬人化がやわらかく、農村の朝の光と空気が一息で立ち上がる。初めての投句で、暮らしの中の何気ない一場面をここまで端正な一句に結んだ手際が見事だ。技巧の巧拙を競うのではなく、暮らしの手触りをそのまま言葉にする――この企画がずっと願ってきたことを、静かに体現した一句である。

Tokubetsu

特別選定

白鳥座 焚き火灯り ちらちらと 星と火賞

時の旅人オンライン投句

見上げれば夏の夜空に白鳥座、目を落とせば焚き火の灯りがちらちらと揺れる。天の星と地の火が、同じ「ちらちら」というまたたきで静かに響き合う。遠い星の光も、すぐそばの炎も、見つめる人の心には同じ温度で届く。週末ごとに火を囲んできたこの地区ならではの一句で、夜のしじまと火のぬくもりが行間からたちのぼってくる。

蝉しぐれ 鳴けばうるさし 鳴かねば寂し うるさし寂し賞

わわわ

降りしきる蝉の声は、鳴けばうるさく、いざ鳴きやめば寂しい。相反する二つの心が、蝉しぐれという一語の中で見事に釣り合っている。これは蝉に限った話ではない。賑やかさを疎みながら、その賑やかさが消えると寂しくなる――夏の終わりに誰もが覚えのある、あの心の揺れそのものだ。暮らしの機微を飾らずに掬い取った一句である。

All Entries

全投句

投句者ごとに、通し番号順で掲載しています。

時の旅人(5句)

長月の冷気と実り、焚き火や氏神の景を、丁寧な観察でとらえる方です。天と地、季節の移ろいを静かに見つめる眼差しが五句を通して一貫しています。

長月の 露滴りて 冷気満つ

時の旅人オンライン投句

ひんやりと 冷気漂う 長月の朝

時の旅人オンライン投句

ひぐらし たわわに稔り 早稲みかん

時の旅人オンライン投句

白鳥座 焚き火灯り ちらちらと 星と火賞

時の旅人オンライン投句

氏神の 嵐の後の 落ち葉たち

時の旅人オンライン投句

み(5句)

言葉遊びと機知、そして土地の言葉が持ち味です。日常のふとした疑問やおかしみを茶目っ気たっぷりにすくい取り、小さな命への優しいまなざしも印象に残ります。

ばら寿司を なんでバラバラかと 議論する

み

水槽の メダカの世界 いかがかな

み

口笛を 吹けば風ふく おこちゃど

み

獣らに 先を越されて 栗拾い

み

彼岸花 誰に聞いたか 咲く時期を

み

老女(5句)

秋の景を細やかに写しつつ、サロンや暮らしへの感謝で締めくくる、温かく健やかな作風です。季節の一場面をよくとらえます。

コンサート 闇深くして 焚き火あり

老女

老いも若きも 月夜のうさぎ

老女

軒下に 蜘蛛の子移る 秋厚し

老女

彼岸花 二部咲きなり 蝶旋回す

老女

傘寿過ぎ サロンの皆様 感謝です

老女

アカシヤ(4句)

暮らしのひとこまを軽やかに明るく切り取る方です。日々を楽しもうとする前向きさと、周囲への温かなまなざしが光ります。

おれ薬 飲んだかまだか 湯呑みに聞き

アカシヤ

小雨降り 陽がさしわあ 虹がでた

アカシヤ

明かりして 笑顔と焼きトリ 香りくる

アカシヤ

山並みに 救急車がなる こだまして

アカシヤ

のりうつぎ(6句)

刈り取りの田、方言のぼやき、サックスの音色、サロンでの手仕事――暮らしと人の交わりを生き生きと詠む方です。

草の香を のこして田んぼ 刈り取られ

のりうつぎ

草とりは よだきあついと 言ってるよ

のりうつぎ

ツケが回って ああどげんすっかい やるしかない

のりうつぎ

暗闇に サックスの音(ね) 刈田にひびく

のりうつぎ

針を手に キーホルダー作り 難しい

のりうつぎ

むずかしい キーホルダー作り 笑いのサロン

のりうつぎ

わわわ(18句)

十八句という圧巻の量に、笑いと哀しみが同居する、ひときわ豊かな作風です。暮らしのあらゆる場面が句になり、ふと見せる真情に奥行きがあります。

この暑さ 熊本地震 声も出ず

わわわ

これでもか 自然の試練 熊本や

わわわ

この暑さ ごめんねごめんね もういいわ

わわわ

こんなにも 日照りが続き 何のバツ

わわわ

蝉しぐれ 鳴けばうるさし 鳴かねば寂し うるさし寂し賞

わわわ

人生の 残りを数える 我がいる

わわわ

忘れ物 取りに行っては また忘れ

わわわ

夜空に 母ちゃんと呼べば 星流る

わわわ

よだきいな 行くか座るか サイコロだ

わわわ

我楽し ねこに恋する 老女です

わわわ

いつの間にか ネコは私の つっかい棒

わわわ

ネコの目が 私見つめる 何なのさ

わわわ

山に月 耳にサックス ハーモニー

わわわ

満月や サックス響く 田んぼ道

わわわ

サックスの 音色が月に 届くかな

わわわ

宮日の 吹き矢の写真で 盛り上がる

わわわ

ツンデレの ツンが多いぞ デレ増やせ

わわわ

山の墓 せんこう煙り カラス鳴く

わわわ

順(10句)

母の笑み、季節の移ろい、水と自然への思い――五感で暮らしと自然をとらえる、繊細で瑞々しい作風です。季節の一歩をそっと感じ取る眼差しが持ち味です。

母の笑み プリンおいしい 涼風

順

まだ登り もう下り坂 セミの声

順

高い雲 五感目覚め 舌づつみ

順

処暑の ひんやり朝も ひびき合い

順

す〜と吹く 小さい秋は 虫の声

順

出会い数 自然と文化 ひまわりに

順

秋風に 視覚も競う 食卓

順

水不足 多量の水 さようなら

順

重陽 花木も月も 彩色

順

動く者 波紋広がる 旅人に

順

あざみ(2句)

今回初めての投句ながら、暮らしの中の何気ない一場面を端正な一句に結ぶ手際が光ります。黄金色の田を詠む句には収穫期の朝の光と空気がのびやかに満ちています。

おはようと あたま下げてた 黄金色も ★最優秀

あざみ

黄金色 ねむり吹きとぶ 田んぼみち

あざみ

選考外・別掲

暮らしの随想

「百年笑顔の一句」は、暮らしの中で感じたことを五・七・五の一句に結ぶ営みです。けれど、心の動きは時に一句の器からあふれ、もっと自由な言葉のかたちを求めることもあります。ここでは、選考の枠にはとらわれず、暮らしの情景をのびやかに綴った作品を「暮らしの随想」としてご紹介します。優劣を問うものではありません。こうした自由な綴りも、この場ではいつでも歓迎します。

ほとんど 刈り取り済み 寂しいやら嬉しいやら

あざみ

田んぼの においあとに 昔を想い出す また来年 逢いましょう

あざみ

友よりのプレゼント 大人の塗り絵 ワクワクするよ ありがとう

あざみ

生姜の天ぷら 枝付きを 口に持っていく 豪快な食べっぷり

あざみ

刈り取りの寂しさと嬉しさ、田の匂いに呼び覚まされる記憶、贈り物の弾む心、豪快な食べっぷり――どれも、暮らしのひとこまをそのままの言葉で綴った、あたたかな随想です。