下塚田ふるさと応援隊の歩み
2013年頃 仲間が自然と集まる → 2020年 正式組織化 → 2024年 農村RMO事業
2013年頃から、地域では明確な組織こそなかったものの、気の合う50代・60代の住民たちが、何となく集まり、草刈りや見守りなどをワイワイと楽しみながら取り組む姿が見られるようになっていました。
制度でも義務でもない、ごく自然な集まり。そこには、地域をなんとかしたいという静かな思いと、「仲間と一緒なら楽しい」という温かさがありました。
— 縁もゆかりもない5名が示した、新たなつながり
そんな中、2018年2月18日、地区内で火災が発生します。被災された方は、Uターンしてこの地に戻り、ひとり静かに暮らしておられ、地区の自治会にも加入していない方でした。
地域には縁故者や同窓生もいましたが、現場に駆けつけたのは、そうした関係のない5名の有志だけ。現・下塚田ふるさと応援隊副会長の呼びかけに応じ、田上吉美(現・副会長)を含む5名が、1台の重機、2トンダンプ、軽トラックダンプを持ち寄り、雨の中、カッパに身を包んで焼け跡に立ちました。異臭とすすにまみれながらの作業の末、建物の基礎だけが静かに姿を残しました。
かつてであれば地域総出で行われていたであろう作業。しかしその日、集まったのは、縁もゆかりもない5名の有志だけでした。この出来事は、地域の助け合いの力が弱まりつつある現実を突きつける一方で、無名の人々が支え合う新たなつながりの芽生えでもありました。
「困っている人を放っておけない」
ただその思いだけが、人を動かしていました。
この火災をきっかけに、これまで「なんとなく」集まっていた人々の間に、「地域のために、もっと継続的に、体系的に取り組んでいこう」という思いが芽生えます。2019年末頃には、そうした機運が高まり、翌2020年4月、「下塚田ふるさと応援隊」として正式に組織化。原始メンバー11名に同年8月に1名参加で12名による新たな出発が、静かに、しかし確かな決意とともに始まりました。
組織化に伴い、安定的かつ継続的な活動を実現するため、独自の組織経費を捻出する新たな活動に着手しました。現在も継続している主要事業の三本柱は、「宮崎県河川パートナーシップ事業」(河川堤防の草刈り:年2回)、「宮崎県クリーンロードみやざき事業」(県道の路側帯及び法面の草刈り作業:年2回)、「日南市市道愛護要綱に基づく市道の草刈り作業」(年2回)です。
下塚田ふるさと応援隊メンバー(2020年8月6日)
— 農村RMOモデル形成支援との出会い —
2020年4月、「下塚田ふるさと応援隊」は正式に組織化され、地域の草刈りや見守り、環境整備など、日々の暮らしを支える活動を地道に積み重ねてきました。しかし、人口減少や高齢化が進む中で、「このままでは地域の暮らしそのものが立ち行かなくなるのではないか」という危機感も、次第に強まっていきました。
そんな中、私たちが出会ったのが、国の「農村RMO(地域運営組織)モデル形成支援事業」でした。この制度は、地域住民が主体となって、生活支援や地域資源の活用、担い手の育成などを一体的に担う「地域運営組織(RMO)」の形成を後押しするもので、農村地域の持続可能な暮らしを支える新たな仕組みとして注目されていました。
この事業との出会いのきっかけ
この事業との出会いのきっかけをくれたのが、現・一般社団法人ススメル代表理事の黒田駿平さんです。黒田さんは、私たちの活動に共感し、地域の未来を見据えた持続的な仕組みづくりの必要性を丁寧に説いてくれました。その言葉に背中を押されるように、私たちはこの制度の導入を真剣に検討し始めました。
「点」で続けてきた活動を、「面」として広げ、地域全体を支える仕組みに変えていく。農業、福祉、暮らし、そして人のつながりを一体で支えるRMOの考え方は、私たちが目指してきた「地域の力を取り戻す」という思いと、まさに重なるものでした。
2024年度 事業採択
こうして、準備と対話を重ねた末、2024年度、私たちは「農村RMOモデル形成支援」事業の採択を受けることができました。これは、地域の未来を見据えた新たな挑戦の始まりでもありました。
日本の農業は高齢化と担い手不足、耕作放棄地の増加、生活インフラの希薄化、気候変動への対応など、多面的で深刻な課題を抱えています。業務の属人化や非効率な管理体制も相まって、生産性と持続性の確保が急務となっています。
下塚田地区の現状
下塚田地区も同様の課題に直面しています。現在、地区の世帯数は45世帯前後ですが、労力を伴う活動に参画できる世帯は35世帯前後にとどまっています。予測データでは、この数字が2030年度には15世帯まで減少することが見込まれており、地域の存続そのものが危機的状況にあります。
「他地域のモデルになりうる様な小さな成功事例を作り出す事」が合言葉です
こうした悲観的な予測に果敢に立ち向かうため、2024年から「農村RMOモデル形成支援事業」に取り組むこととしました。あらゆる方面から関心を持って頂き、関係人口の増加に繋げ、事業終了後の実走を視野に、「農用地保全」、「地域資源活用」、「生活支援」の三分野について、試行錯誤や実験事業、視察研修等を重ねながら、課題解決に向けた具体的な方策を構築しています。
2025年12月、農村RMOモデル形成支援事業の「地域資源活用」部門の核として、「第1回 田んぼあぜ道 軽トラ市 in 下塚田」を開催しました。350メートルのあぜ道を会場に、全国でも1%未満とされる農道型マルシェです。
52
出店者数
48
スタッフ数
1,890
来場者数
監査役・作本和弘氏の発案により生まれたこのイベントは、日頃の農地保全活動の成果である「美しい農村景観」を来場者に届けることで、地域活動の見える化を実現しました。地域の誇りを取り戻す小さな革命の始まりとなりました。
2026年2月21日・22日の二日間、農村RMOモデル形成支援制度を活用した交流拠点整備の一環として、駐車スペースの造成作業を実施。仏坂環境開発株式会社様のご協力のもと、重機・ダンプ・振動ローラーを駆使し、再生骨材での転圧を完了しました。
すべての作業は会員の手によるもの。年度末完成を目指した外構工事をわずか二日間で完了し、締めくくりにご寄付いただいた花桃の苗木10本を植栽しました。会員の中には造作大工・左官工事・設備設計のプロフェッショナルが在籍しており、今後も専門技術を活かした内装工事が進められる予定です。
地域の未来を見据えたこの取り組みは、まさに"手づくりのまちづくり"。
— この記録を、次の誰かへ
私たちの取り組みは、完成された成功事例ではありません。むしろ、どこにでもある日常の出来事——一軒の火災、数人の有志、声を掛け合う小さな習慣——から始まったという点に意味があります。
特別ではないからこそ、同じことは他の地域でも起こり得ます。多額の補助金も、特別な制度も必要ありません。あるのは、人を思いやる気持ちと、できることを持ち寄るという単純な仕組みだけです。
地域は、まだやり直せるのか——。
下塚田の静かな変化は、日本各地に共通するこの問いへの、ひとつの答えかもしれません。
再生は大きな改革ではなく、誰か一人の困りごとに向き合うことから始まります。この記録が、どこかの地域で何かを始めるきっかけになればと願っています。
下塚田ふるさと応援隊は、地域の未来を守るため、引き続き創意工夫と実行力をもって歩み続けます。
今後更なる各方面からのご支援をお願いいたします。